No.29-自社の外国人社員が実はオーバーステイ状態であったことが判明した場合と引き続き雇用した場合の不法就労助長罪


 

Q 自社で雇用している外国人社員が実はオーバーステイであった場合、会社としてどのような対応をすればいいのでしょうか?

 

 


 

A

<自社の社員が実はオーバーステイ状態であった場合>

⇒ 自社で雇用していた外国人従業員が実はオーバーステイの状態であった場合、基本的に、退去強制手続の対象となり、このままの状態では、引き続き外国人従業員を雇用することはできません。

 

この場合、会社がとるべき手続は、一刻も早く、入国管理局へその外国人従業員を出頭させることが必要です。この際に、そのまま外国人を雇用すると不法就労助長罪に問われる可能性があるため、本人に出頭を促す必要があります。

 

ただ、退去強制手続に入ったとしても、必ず退去強制されるわけではなく、特別に在留を許可する事情があれば、「法務大臣による在留特別許可」により、在留の継続が認められる場合があります。

 

なお、オーバーステイの外国人従業員は、下記の順に順って、在留の可否が決せられます。

 

 

<参考>

退去強制手続は、以下のような手順で進められることになります。

「入国警備官による引渡」

入国警備官は、違反調査により容疑者を収容したときは、身体を拘束した時から48時間以内に、調書及び証拠物とともに、その容疑者を入国審査官に引き渡さなければならないとされています。

 

「入国審査官による違反審査」

入国警備官から容疑者の引渡しを受けた入国審査官は、容疑者が退去強制対象者(退去強制事由のいずれかに該当し,かつ,出国命令対象者に該当しない外国人をいいます。)に該当するかどうかを速やかに審査しなければならないとされています。
  

入国審査官が、容疑者が退去強制対象者に該当すると認定し、容疑者がそれを認めて帰国を希望するときは、退去強制令書が主任審査官によって発付され、その外国人は退去強制されることになります。

 

「口頭審理」

入国審査官が退去強制対象者に該当すると認定した場合で、容疑者がその認定が誤っていると主張したり、又は、誤ってはいないが、日本での在留を特別に認めてもらいたいと希望するときは、認定の通知を受けた日から3日以内に口頭をもって特別審理官に対し、口頭審理を請求し、これに基づき、審問が行われることとなっています。

 

 特別審理官は、入国審査官の行った認定に誤りがあるかどうかを判定します。特別審理官が入国審査官の認定に誤りがないと判定し、容疑者がそれを認めて帰国を希望するときは、退去強制令書が主任審査官によって発付され、我が国から退去強制されることになります。

 

 一方、容疑者がその判定が誤っていると主張したり、又は、誤ってはいないが在留を特別に認めてもらいたいと希望するときは、第3段階の審査に当たる法務大臣への異議の申出を行うことができます。

 

 また、口頭審理の結果、退去強制事由のいずれにも該当しないことが分かり、特別審理官がそのような判定をした場合や特別審理官がその容疑者が出国命令対象者に該当すると判定し、主任審査官から出国命令を受けたときは,特別審理官は直ちにその者を放免しなければならないと規定されています。

 

なお、特別審理官とは、法務大臣が指定する上級の入国審査官であり、主任審査官とは、最も上級の入国審査官の一つであり,法務大臣が指定します。

 

「異議の申出」

入国審査官の認定、そして特別審理官の判定を経て、容疑者が、その判定が誤っていると主張したり、又は、誤ってはいないが日本での在留を特別に認めてもらいたいと希望するときは、その判定の通知を受けた日から3日以内に不服の事由を記載した書面を主任審査官に提出して、最終的な判断を法務大臣に求めることができ、これを異議の申出といいます。

 

「法務大臣の裁決」

異議の申出を受理した法務大臣は、直接容疑者を取り調べることはしませんが、入国警備官の違反調査、入国審査官の違反審査、そして特別審理官の口頭審理という一連の手続で作成された証拠(事件記録)を調べて裁決することになります。

 

そして、法務大臣が異議の申出に理由がないと裁決した場合は、主任審査官にその旨を通知することによって、主任審査官が退去強制令書を発付することになります。

 

一方、主任審査官は、法務大臣から容疑者が退去強制事由のいずれにも該当しないとして異議の申出が理由があると裁決した旨の通知を受けたときや容疑者が出国命令対象者に該当するとして異議の申出が理由があると裁決した旨の通知を受けて出国命令をしたときは、直ちにその者を放免しなければならないと規定されています。

 

「在留特別許可」

法務大臣は、異議の申出に理由がないと認める場合でも、次のような場合には、在留を特別に許可できるとされており、この法務大臣の裁決の特例が、在留特別許可です。

 

(1) 永住許可を受けているとき

(2) かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき

(3) 人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき

(4) その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき

 

この在留特別許可は、本来であれば我が国から退去強制されるべき外国人に対して、法務大臣が在留を特別に許可することができるとされているものであり、許可を与えるか否かは法務大臣の自由裁量にゆだねられています。