出版物配信契約書の意義


【意義】

出版物配信契約書は、出版者が配信事業者に対して電子出版物の配信を許諾し、配信事業者が電子出版物を出版者の希望する価格でユーザーに配信し、その配信により得られた配信利用料から一定の手数料を差し引いた残額を出版者に支払う場合に用いられる契約書です。 

 

形としては、出版者が著作権者から許諾を得ている電子出版物の複製権及び公衆送信権を配信事業者へ再許諾する形になります。

 

 


【主な配信方法】

出版物配信許諾契約における主な配信方法としては、主に以下のものがあります。

 

「ダウンロード型」

配信事業者が指定する方法によりユーザーが登録した端末に電子出版物をダウンロードするもの。

 

「閲覧型」

配信事業者が管理するサーバーに格納された電子出版物のファイルをユーザーがそのサーバーにアクセスすることによりインターネット等を通して閲覧するもの。

 

 


【配信事業者に課される制限】

配信事業者は、「ダウンロード型」又は「閲覧型」により電子出版物をユーザーへ配信することになりますが、その際、出版物配信許諾契約において、配信事業者に次のような制限を課すことが多いといえます。

 

(1)「ダウンロード型」による配信においてユーザーが電子出版物を再ダウンロードできる期間を一定期間に限ること。

(2)ユーザーが電子出版物を印刷できないようにすること。

(3)ユーザーが利用する端末の数を一定数に限ること。

 

 


【立ち読み】

ユーザーが電子出版物の一部を立ち読みできるようにするため出版者から配信事業者に対する電子出版物の立ち読みの許諾条件(ex.閲覧可能なページ)について規定されることがあります。

 

 


【電子出版物の欠陥、不具合等に伴うお問い合わせ】

出版物配信契約書では、配信事業者が配信した電子出版物に欠陥、不具合等があったことによりユーザーからお問い合わせがあった場合には、配信事業者が窓口となって対応する旨の規定が定められることが多いといえます。

 

ファイルデータの破損、誤植等その欠陥、不具合等が電子出版物そのものに起因して生じた場合には、出版者が、その欠陥、不具合等が配信システム又は不正アクセス防止措置に起因して生じた場合には、配信事業者がそれぞれ対応することが多いといえます。

 

 


【配信義務】

配信事業者は、出版者から提供された電子出版物を配信事業者が事前に提供する配信基準に合致する限り、ユーザーへ配信しなければならないとする形が通常です。

 

 


【配信許諾の対価】

配信許諾の対価の定め方としては、次のような形で取り決めることが多いといえます。

 

「ダウンロード型」

希望利用価格×〇パーセント×当月のダウンロード数

 

「閲覧型」

希望利用価格×〇パーセント×当月の利用者数

 

 


【配信事業者の免責】

サーバーダウン等やむを得ない事由がある場合には、電子出版物の配信を中止したり、又はユーザーによるアクセスを制限しても、配信事業者は、故意又は重過失があるときを除き、出版者に対し、何らの責任を負わないすることが一般的です。

 

 


【契約終了時におけるユーザーの再ダウンロードへの対応】

出版物配信契約が終了した場合、配信事業者は、電子出版物を配信することが一切できなくなります。

 

もっとも、ユーザーとの利用規約において配信事業者がユーザーに対して電子出版物の再ダウンロードを認めていることがあるため、出版物配信契約が終了しても、その再ダウンロード期間内に限り、配信事業者に電子出版物の配信を認めることがあります。