イラスト制作業務委託契約書の意義


【意義】

イラスト制作業務委託契約書は、委託者が受託者へ宣伝用、ホームページ用等のイラスト素材の制作を委託する場合に用いられる契約書をいいます。

 

イラスト制作業務委託契約は、受託者に仕事完成義務が課されていたり、契約条項中に検査条項が含まれることが多いため、請負契約の要素が強い契約といえます。

 

 


【仕様の定め方】

イラストの仕様の定め方には、次のようなものがあります。

 

「個別契約又は仕様書で取り決める方法」

イラストの仕様を別途個別契約又は仕様書で取り決め、イラスト業務委託契約締結時にイラストの仕様を取り決めない方法

⇒イラスト制作業務委託契約締結時に仕様を明確にできない場合、こちらの方法を用いることになります。

 

「イラスト業務委託契約締結時に取り決める方法」

イラストの仕様をあらかじめイラスト業務委託契約締結時に取り決め、個別契約又は仕様書で取り決めない方法

⇒イラスト制作業務委託契約締結時に仕様を明確にできる場合、こちらの方法を用いることになります。

 

 


【仕様の特定方法】

イラストの制作については、一定程度受託者の創意工夫によるところがあるため、その仕様が抽象的になるところがあります。

 

そのため、イラストの仕様の特定方法については、イラスト制作の目的、用途、コンセプト等を中心に仕様を取り決めることになります。

 

 


【納期の定め方】

受託者が制作したイラストの納期の定め方については、次のようなものがあります。

 

「個別契約で取り決める方法」

イラストの納期を別途個別契約で取り決め、イラスト業務委託契約締結時にイラストの納期を取り決めない方法

⇒イラスト制作業務委託契約締結時にイラストの納期を明確にできない場合、こちらの方法を用いることになります。

 

「イラスト業務委託契約締結時に取り決める方法」

イラストの納期をあらかじめイラスト業務委託契約締結時に取り決め、個別契約で取り決めない方法

⇒イラスト制作業務委託契約締結時にイラストの納期を明確にできる場合、こちらの方法を用いることになります。

 

 


【個別契約の締結方法】

イラストの仕様、納期等を取り決める場合、委託者と受託者との間で個別契約が締結されることになりますが、その場合の締結方法については、注文書と注文請書を交付する方法、電子メールにより合意する方法等が考えられます。

 

 


【検査】

イラスト制作業務委託契約においては、「受託者がイラストを完成させたのか否か?」、「受託者が制作したイラストの内容が契約内容に適合するものであるか否か?」をそれぞれ確認するため、委託者による検査条項が規定されます。

 

具体的には、一定期間内に委託者が受領したイラストを検査し、合格であれば、受託者の業務が完了したものとして取り扱い、不合格であれば、委託者は、受託者に対してその修正又は代替品の納入を求めることになります。

 

ただし、イラストの制作については、仕様を一義的に確定できず、抽象的なものにならざるを得ないことが多く、委託者が受託者へ何度もデザインの修正を求めるおそれがあるため、一定回数の修正をもって、制作されたイラストが検査に合格し、受託者の業務が完了したものとして取り扱うことが考えられます。

 

 


【再委託】

イラスト制作業務委託契約では、受託者の創意工夫によりイラストの制作が行われるため、委託者の承諾がない限り、再委託を認めない形が多いといえます。

 

 


【知的財産権の帰属】

イラスト制作業務委託契約における知的財産権の帰属の定め方については、次のものがあります。

 

1.知的財産権を委託者に帰属させる方法

⇒イラストについての著作権(著作権法第27条及び同条第28条に定める権利を含みます。)その他の一切の知的財産権が受託者に帰属することを受託者が保証し、その権利が受託者から委託者へ移転し、受託者が著作者人格権を行使しないとする方法

 

2.知的財産権を受託者に帰属させる方法

⇒イラストについての著作権(著作権法第27条及び同条第28条に定める権利を含みます。)その他の一切の知的財産権が受託者に帰属するものの、特定の目的で利用する場合に限り、委託者がイラストの複製等を行うことができるとする方法

 

 


【第三者の知的財産権侵害】

受託者が制作したイラストが第三者の知的財産権を侵害するものであった場合の主な対応については、次のものがあります。

 

1.制作したイラストが受託者の知る限り第三者の知的財産権を侵害しないことを受託者が表明保証し、万一第三者との間でイラストについて、知的財産権侵害の紛争が生じたときは、相互に協力してその紛争に対応することとし、その紛争解決に要する費用を支出し、又はその紛争により損害が生じたときは、委託者及び受託者それぞれの帰責性を考慮し、これらの負担割合を決定する方法

 

2.制作したイラストが受託者の知る限り第三者の知的財産権を侵害しないことを受託者が表明保証し、万一第三者との間でイラストについて、知的財産権侵害の紛争が生じたときは、受託者が自らの責任と費用負担によりその紛争に対応することとし、委託者がその紛争解決に要する費用を支出し、又はその紛争により損害が生じたときは、受託者は、委託者へその費用を償還し、又はその損害を賠償する方法

 

なお、リスク管理の観点から受託者がイラストの制作時に参考にした資料等を委託者へ提出する旨の条項がイラスト制作業務委託契約に規定されることがあります。

 

 


【秘密情報】

制作したイラストについて意匠登録する予定がある場合には、その登録要件として新規性が求められ、そのイラストが公開されると新規性を失い、意匠登録できないおそれがあります。

 

そこで、イラスト制作業務委託契約においては、委託者が公開するまで制作したイラストを秘密情報として取り扱う場合があります。