No.17-公正証書による差押え


 

Q 以前、友人に500万円を貸し出す際に、相手が本気で返済する気があるのか疑問であったため、強制執行認諾文言付き金銭消費貸借契約公正証書を作成しました。最初の頃は順調に返済されていたものの、最近は、返済が滞りがちで、公正証書による差押えも考えております。そこで、公正証書による差押えの概略について教えてください。

 

 


 

A

<公正証書による差押えの手順>

⇒ 本件のような金銭消費貸借契約公正証書、離婚公正証書又は各種契約に基づく公正証書が作成され、債務者が債務の支払いを怠った場合、直ちに強制執行に服する旨の文言(いわゆる強制執行認諾文言)が記載されていても、それだけでは強制執行することはできません。

 

債権者が、強制執行認諾文言付公正証書に基づいて強制執行の手続きをする場合には、まず「送達」と「執行文付与」の手続が必要です。 この「送達」とは、法律の定める方法により債務者に公正証書の謄本を送付・到達させることをいい、債務者に書類の内容を確認させることを目的としています。

 

その「送達」には、「交付送達」と「郵便による送達」があります。

 

「交付送達」

債務者本人が出頭して公正証書を作成した場合に、公証役場内で行わなければなりません。基本的に債権者・債権者の代理人が送達申立書に記入し、 債務者等が公証人から公正証書謄本を受け取った後に、送達証明書が交付されることになります。

 

「郵便による送達」

債務者本人が出頭せず債務者の代理人が公正証書作成を嘱託した場合は、交付送達はできず、郵便による送達を行うことになります。 債権者・債権者の代理人が送達申立書に記入し、公証役場へそれを提出した後に、公証人が債務者等宛てに特別送達で公正証書の謄本を送り、債務者等が受け取ったら送達完了となります。 その後、郵便局から通知が公証役場に届いた場合、送達証明書が交付されます。

 

以上のような「送達」手続きを終えた後に、公正証書の正本を有する債権者が「執行文付与」の申立を行い、公証人が、執行文を付与しても問題ないと判断したときは、公正証書の正本の末尾に、「○が▲に対しこの証書により強制執行できる。」旨の文言が付され、公正証書正本が債権者へ返却されます。

 

最後に、債権者が、執行文の付いた契約公正証書正本と送達証明書等の必要書類を揃えて地方裁判所へ赴き、強制執行の申立てを行います。

 

なお、どこの裁判所に申し立てるかは、差押財産が何かによって決まり、例えば、債務者等が受けている給与債権の差押えは、債務者等の住所地を管轄する地方裁判所であり、債務者等の所有している不動産や動産の差押えは、その不動産や動産の所在地を管轄する地方裁判所に申立てをすることになります。

 

したがって、債権者としては、債務者のどの財産を差し押えるかを調べたうえ、管轄の裁判所に申立てをすることになります。 そのため、予め相手方の取引先銀行名や勤務先名等を調べておくのが肝要で、仮に相手方にその対象となる財産がなければ、せっかく費用を負担して強制執行の申立てをしても、その強制執行は失敗に終わってしまうことになります。