SES契約書の意義


【意義】

SES契約とは、準委任契約に基づきエンジニア等の要員を他者の開発案件等に従事させる契約のことをいい、SESとは、システムエンジニアリングサービスの略称をいいます。

 

なお、SES契約では、受託者の従業員が委託者の事業所に常駐する形を採ることが多いといえます。

  

 


【SES契約で問題になる偽装請負のリスク及びその対応策のポイント】

 

【リスクのポイント】

SES契約では、受託者の従業員が委託者の事業所に常駐する形をとることが多く、委託者の担当者から受託者の従業員に直接指示を行うと「偽装請負」と評価されるリスクがあります。

 

もし、偽装請負だと判断されると労働者派遣法においてその時点における受託者及び受託者の従業員間に係る労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みを委託者が受託者の従業員へ行ったものとみなされるため、受託者の従業員が希望すれば、委託者が直接受託者の従業員を雇用しなければならないリスクがあります。

 

【委託者側の対応策】

上記のリスクに対する委託者側の対応策としては、受託者に業務責任者を選任してもらい、受託者へ指示を出す場合には、全てその業務責任者を通じて行うことが挙げられ、受託者の従業員へ直接指示を出すのを控えることが重要となります。

 

 


【基本契約及び個別契約】

SES契約では、SES契約本体を基本契約として位置付けた上で、注文書と注文請書の取り交わし等により委託者及び受託者間で個別契約を締結する形が一般的にとられます。

 

基本契約においては、再委託の可否、業務責任者、連絡協議会、契約の有効期間等の基本事項が、個別契約においては、個別の作業内容、作業期間、委託料等の個別事項がそれぞれ定められます。

 

 


【費用負担】

受託者がSES業務を実施するに際して生じる交通費、宿泊費その他の費用については、原則、受託者が負担する形とし、委託者の承認がある場合に限り、これらの費用を委託者の負担とする形が望ましいとされます。

 

これは、これらの費用の全てを委託者の負担とすると委託者が受託者の従業員を自己の従業員と同一視していると捉えられ、偽装請負と評価される可能性があることによります。

 

 


【委託料の支払期日と下請法における60日ルール】

委託者が下請法上の親事業者に、受託者が下請法上の下請事業者にそれぞれ該当する場合、受託者による役務提供の日から起算して60日以内に委託者が委託料の全額を支払わないと下請法違反となるため、SES契約における委託料の支払期日については、短くしていくことが重要となります。

 

例えば、3月1日から3月31日までを対象としたSES業務について、4月10日に請求書を発行し、5月10日を委託料の支払期日とする場合には、3月1日に実施されたSES業務の委託料の支払期日がその役務提供の日から起算して60日を経過して設定されていることになるため、下請法に抵触していると考えられます。