No.13-取引基本契約書


 

Q 取引基本契約書とは何ですか?

 

 


 

A

<取引基本契約の概要>

取引基本契約は、その性質上、売買の要素と請負の要素を併せ持つ契約とされ、「取引基本契約」という呼び方以外にも、「製造委託契約」、「製造物供給契約」、「委託製造契約」等と呼ばれる契約類型です。

 

 

取引基本契約では、予め、契約当事者間で基本契約を締結し、取引の基本となる事項や、将来の個別取引に共通する事項を取引基本契約書にて取り決めておきます。

 

そして、具体的な個々の取引においては、契約書を用意することなく、注文書と注文請書を利用して、品名・数量・単価・納期等の具体的条件を取り決めます(このことを契約書を用いてはいないものの「個別契約」といいます)。

 

基本契約の条項に、「個別契約の内容が、本契約と異なるときは、個別契約が優先される。」等と定められ、当事者間で基本契約と個別契約の法的関係が明らかにされます。

 

このような契約締結方法を採用する理由は、売主と買主間との取引が一回限りではなく、同一の当事者間で複数回行われ、継続的な関係が築かれていることがあり、契約ごとにすべて契約書を作成していると手間がかかるためです。

 

 

 


 

(参考-取引基本契約においてよく利用される契約条項)

 

<支給品の目的外使用の禁止を定める条項>

取引基本契約では、委託者から受託者や金型や図面等が貸与されるため、他社への転売や受託者の再委託先が模造品を製作してしまう等のリスクがあります。

 

そこで、支給品を制作目的外で使用してはならない旨の規定を設けたり、さらには、受託者側の事業所への立ち入りを定めることがあります。

 

 

<特別採用条項>

特別採用条項とは、納入商品に瑕疵があったときに、買主側が代金の減額を請求して、本来の引き渡しとして扱う条項です。この条項があると、売主として再納入のコストを削減できるというメリットと買主として納入を急いでいる場合に柔軟な対応が取れるメリットがあります。

 

他方、売主には特別採用の場合、代金が減額され本来受け取るべき代金を受け取れなくなるというデメリットと買主には特別採用条項の中に協議で減額幅を定めるとした場合、その交渉が困難となることもありうるというデメリットがそれぞれあります。

 

 

<検収条項>

検収条項では、買主の商品納入後に行われる検査の期間、その終了時期等を定めます。検収条項の中身により、所有権移転時期、危険負担の移転時期に影響を及ぼすため重要な条項となります。

 

物の所有権が移転する時期は、通常契約書に明記され、「目的物の引渡時」、「目的物の検収の合格時」、「代金の支払時」のいずれかに移転するとする場合が多いので、検収についての条項が大事になってきます。

 

また、危険負担の移転時期との関係でも、仮に売主側が、危険負担条項において、目的物の引渡時までその危険を負担する旨の内容を定めていた場合、売主は買主の納入後検査時まで、滅失等のリスクを負い続けます。したがって、所有権移転時期のみならず、危険負担の移転時期との関係でも、検収についての条項が大事になってくるわけです。

 

 

<貸与品の取扱いについての条項>

買主が売主に対して、目的物制作のため工具・機械・金型等を貸与することがあります。買主が売主に貸与する際、有償であれば賃貸借契約として、無償であれば使用貸借契約として、それぞれ成立します。

 

貸与期間・有償か無償か・使用方法・管理等の貸与品に関する取り決めは、本体の取引基本契約書とは別の契約書で定めた方がよいです。

 

特に重要な物を貸与しているケースもありますので、返還の条件は詳細に定める必要があります。

 

 

<担当者に関する条項>

取引基本契約においては、担当者に関する定めを契約書中に書いた方がよいです。それは、契約を巡るトラブル・疑問点が生じた場合、担当者の連絡先が契約書に書かれているのなら、問い合わせや協議が円滑に進むと考えられるからです。

 

なお、取引基本契約は、性質上継続的に行われる取引であり、担当者の入れ替えも予想されますので、担当者が代わる場合、相手方に対する通知義務を課す方がよいでしょう。

 

 

<補修部品に関する条項>

売主から受け入れた製品を買主が他へ転売する場合、後に転売先から瑕疵担保責任を追及されたときに、買主がその瑕疵担保責任を応じる場合があります。

 

瑕疵担保責任を負う場合に、補修部品が市販で入手できるときは、あまり問題になりませんが、補修に使う部品が入手困難な部品であれば、買主が瑕疵担保責任に応じることができなくなる場合があります。

 

そこで、売主に契約終了後一定期間補修部品を買主へ供給する義務を負わせるのが妥当だと考えられます。

 

 

<知的財産に関する条項>

取引基本契約では、知的財産に関する定めが置かれることがあり、委託者から提供される知的財産権は、委託者に帰属すると定めることが多いです。

 

また、完成品に関しては、共同開発の場合、互いの貢献度を基本とした持分を設定し、共有と定めることが一般的です。単独開発の場合は、開発した側に知的財産権を帰属させ、他方に実施権を付与させることが多いです。

 

 

<取引基本契約における解除条項>

取引基本契約のような継続的取引の場合、「やむを得ない事由」がなければ、契約上の解除事由に該当しても、裁判例では、簡単に解除できない扱いになっています。

 

なぜなら、取引基本契約のような継続的取引の場合、受託者は委託者からの継続的な発注を期待して、設備投資等様々な投資を行っており、その期待を考慮してのことです。

 

 

<目的物の調査・改善に関する条項>

取引基本契約には、買主が売主の同意を前提として、売主の事業所に立ち入ることができようにする定める場合があります。これは、買主が売主に対し、品質の向上・技術力の向上・納期の短縮等を期待して行うものです。

 

調査の実施に際し、売主から買主に資料を提出すること、売主は買主の調査実施に協力すること、必要があれば買主の顧客も調査に同伴させることが可能であること等が明記されます。