OEM契約書の意義


【意義】

OEM契約とは、発注者の商標を付した製品の製造及び供給を製造業者に委託する内容を含む契約のことをいい、一般に請負契約の要素及び売買契約の要素があるとされます。

 

この場合、発注者については、注文者及び買主としての地位、製品業者については、請負人及び売主としての地位をそれぞれ有することになります。

 

なお、個々の製品の製造及び供給の委託については、注文書と注文請書によるやり取りにより個別契約を成立させるのが一般的です。

  

 


【OEM契約で想定されるリスク及びその対応策のポイント】

OEM契約で想定されるリスク及びその対応策としては、下記のものが挙げられます。

 

(リスク1)

ユーザーが発注者から購入した製品に欠陥があった場合、発注者がユーザーから責任追及がなされるリスク

(対応策)⇒求償権の条項を定める。

 

(リスク2)

発注者と製造業者間で開示された秘密情報が一方の当事者により勝手に使用されるリスク

(対応策)⇒秘密保持条項を定める。

 

(リスク3)

発注者が製造業者に提供した知的財産権の帰属について争いが生じるリスク

(対応策)⇒知的財産権の帰属に関する条項を定める。

 

(リスク4)

製造業者の都合により個別契約の締結を拒絶され、発注者が製品を市場に展開できないリスク

(対応策)⇒個別契約の拒絶を制限する条項を定める。

 

(リスク5)

製造業者が人員及び設備を整えたにもかかわらず発注者から製品の製造及び供給の委託がないリスク

(対応策)⇒発注保証の条項を定める。

 

 


【仕様の決定方法】

OEM契約における製品の仕様の決定方法については、次のものが考えられます。

 

(1)発注者及び製造業者が互いに協議の上、発注者から製造業者へ交付した製品仕様書の内容によるとする場合

 

(2)発注者及び製造業者が互いに協議の上、製造業者が主導権を握る形で製造業者が発注者へ交付した製品仕様書の内容によるとする場合

 

(3)あらかじめOEM契約書に添付した製品仕様書の内容によるとする場合 

 

 


【試作品】

確定した仕様に基づき試作品を製作し、製造業者がこれを発注者に有償又は無償で納品し、製品の製造前に発注者から承認を得る場合があります。

 

この場合において、発注者は、試作品を第三者に転売してはならない旨が規定されることがあります。

 

 


【専用金型の調達】

製品の製造に必要な専用金型を製造業者が調達する必要があるときは、発注者の費用負担により、製造業者がこれを調達する場合があります。

 

この場合、その所有権は、発注者に帰属し、製造業者は、発注者から無償で専用金型の貸与を受けるという形がとられます。

 

 


【製品に同梱する取扱説明書の作成等】

製品に同梱する取扱説明書の作成等については、次のような対応が考えられます。

 

(1)製造業者が取扱説明書を作成し、これを製品に同梱する形

(2)発注者が取扱説明書を作成し、これを製造業者へ送付し、製造業者がこれを製品に同梱する形

 

なお、上記の(1)(2)のいずれであっても、取扱説明書の内容については、事前に発注者及び製造業者が協議して取り決める形が一般的といえます。

 

 


【発注者の商標を付した製品の製造等の禁止】

OEM契約では、発注者に納品される製品を除き、製造業者は、発注者の商標を付した製品を製造し、又は第三者へ譲渡等をしてはならない旨の条項が規定されることが多いといえます。

 

 


【最低購入保証】

製造業者が製品の製造のために多額の設備投資を行っていて、発注者から一定数の製品を発注してもらいたいと考える場合があり、その場合には、OEM契約において、発注者に最低購入数量の発注を義務付ける場合があります。

 

例えば、契約1年目に〇〇個、契約2年目に〇〇個というような形で最低購入数量を定め、それぞれの年度において、発注者の実際購入数量が最低購入数量に達しないときは、製造業者は、発注者に対し、その不足分の買取りを請求できるというような形で取り決められます。

 

 


【納品前検査】

製造業者が製品を納品する前に自ら製品を検査し、その結果、製品に異常又は重大な品質不良が認められたときは、製造業者は、必要な措置をとった上で、発注者に対し、その措置の内容等の詳細を報告しなければならないとすることがあります。

 

なお、製造業者の措置の内容等が不十分であるときは、発注者は、製造業者に対し、改善対策を指示できるとする場合があります。

 

 


【検査】

製品受領後、一定期間内に発注者がその製品の検査を行い、その製品が異常、品質不良等の契約内容に適合しないものであるときは、発注者は、製造業者に対し、その等を求めることができるとされます

 

ただし、納品前検査を実施しているときは、外観及び数量の検査にとどめ、検査を簡略することがあります。

 

 


【製品の梱包】

納品中に製品が毀損等をすることがないように製造業者が納品に適する形で製品を梱包しなければならないとする旨の条項がOEM契約で規定されることがあります。

 

 


【製造物責任】

OEM契約では、製品の欠陥に起因して、第三者の生命、財産等に損害が生じ、発注者がその第三者から損害賠償請求を受け、発注者及びその第三者間で紛争が生じたときは、発注者及び製造業者が相互に協力して紛争を解決することとし発注者が第三者に対して損害賠償債務を負担するに至り、それについて製造業者に帰責事由がある場合には、発注者は、製造業者に対し、これによって生じた損害を求償することができるとすることが多いといえます。

 

 


【アフターサービス】

OEM契約では、製造業者から納品を受けた製品を発注者が顧客へ販売した後、その顧客による製品に関する問い合わせ、修理依頼その他のアフターサービスへの対応を行う場合、発注者が自らの責任と費用負担により行い、製品の修理については、発注者は製造業者へ有償で委託することができるとされることがあります。

 

このように後日、発注者から製造業者へ製品の修理委託を行うことがあるため、OEM契約において、製造業者に補修用部品を一定期間、製造保管する義務を課すことがあります。

 

 


【商標】

発注者の商標を製品に付す行為及び発注者の商標が付された製品を供給する行為は、商標法での「使用」に該当する行為るため、これらの許諾を発注者から製造業者が行うこと等を目的として商標の取り扱いに関する条項がOEM契約で規定されます。

 

例えば、OEM契約で定める製品以外の製品に発注者の商標を付すことを禁止する旨の条項、商標が未登録である場合に製造業者がこれを商標登録出願することを禁止する旨の条項等が規定されます。

 

 


【改良技術】

OEM契約においては、製品の製造中に新しい改良技術が開発される場合があるため、その権利の帰属等を規定することがあり、例えば、次のような形で規定することがあります。

 

(1)発注者及び製造業者が共同して改良技術を開発した場合

⇒改良技術の権利については、発注者及び製造業者の共有とし、それぞれの当事者は、相手方の承諾なく、改良技術を使用することができる。

 

(2)発注者が改良技術を開発した場合

⇒改良技術の権利については、発注者に帰属する。

 

(3)製造業者が改良技術を開発した場合

⇒改良技術の権利については、製造業者に帰属するものの、発注者は、製造業者の承諾なく、改良技術を使用することができる。