原作利用契約書の意義


【意義】

原作利用契約書は、原作者から原作の著作権についての独占的な利用許諾を受けている映画製作会社が公演主催者に対して原作を利用することを許諾する場合に用いられる契約書のことをいい、許諾料の支払いを条件として公演主催者が原作から脚本を制作し、その脚本を利用して舞台を上演等をすることになります。

 

 


【許諾対象となる舞台の詳細の特定】

原作利用契約では、開催される舞台の回数、場所、料金等になり許諾料が変わってくることがあるため、許諾対象となる舞台の詳細を特定することが重要です。

 

 


【表明保証等】

原作利用契約では、映画製作会社から公演主催者に対して次のとおり表明保証されることがあります。

 

(1)原作者が原作の著作権者であること。

(2)原作の利用について映画製作会社が原作者から独占的に許諾を受けていること。

 

反対に公演主催者から映画製作会社に対して次の事項を誓約することがあります。

 

(1)公演主催者が原作以外の著作物を利用する場合において適切にその権利処理を行うこと。

(2)映画製作会社に表明保証違反があった場合を除き、公演主催者が舞台について第三者から苦情の申立て、損害賠償請求を受けたときは、公演主催者が自らの責任と費用負担により対処すること。

 

 


【許諾の範囲】

映画製作会社が公演主催者に対して原作の利用を許諾する範囲については、一般的には、次のとおりとなります。

 

(1)原作を複製又は翻案して舞台のために脚本を制作すること。

(2)脚本をもとに舞台を制作し、舞台を上演すること。

(3)上演された舞台を録画した録画物を宣伝広告に用いること。

(4)上演された舞台を録画した録画物を動画配信に用いること。

(5)舞台に関する記事、写真等を掲載した上で出版物、公演プログラム等を刊行すること。

 

 


【許諾料】

原作利用契約における許諾料の定め方としては、次のものがあります。

 

(1)固定金額により許諾料を定める方法

(2)最低保証額を定め、又はこれを定めずに上演回数を基準に許諾料を定める方法

(3)最低保証額を定め、又はこれを定めずに公演主催者の興行収入を基準に許諾料を定める方法

 

 


【著作者人格権】

舞台を上演するために原作を複製又は翻案して脚本を制作する場合、原作の改変を伴い、原作者の著作者人格権を害するおそれが出てきます。

 

そのため、原作利用契約では、原作のテーマ、ストーリー構成等の本質的な部分において、公演主催者が原作者の名誉及び人格を害する行為をしてはならない旨が規定されることが多いといえます。

 

 


【舞台の宣伝広告時における原作者の表示】

原作利用契約では、舞台の宣伝広告時に用いるポスター、ウェブサイト等に公演主催者が原作者の表示を行う旨が定められます。ただし、表示スペースに制約があることが多いため、その大きさ及び位置については、公演主催者の判断に委ねる形にするのが一般的です。

 

 


【上演の成功と再上演の許諾】

舞台の上演が成功した場合に公演主催者が再上演できるようにするため、あらかじめ原作利用契約において、再上演の許諾条項が定められることがあります。