取引先から提示された契約書の中身



相手方から提示される契約書の原案・たたき台

新規の取引で契約書が必要になった場合、基本的にどちらか一方が契約書の原案・たたき台を提示するのが一般的で、特に個人事業主の場合、自力で契約書を用意することが難しい場合も多いため、相手方から提示された契約書の原案・たたき台を使って話し合いが進められることが多いと考えられます。


しかし、相手方から提示される契約書の中身というのは、相手に有利な条項が多く用いられている可能性が高く、そのまま契約書の原案・たたき台を受け入れてしまうと、自己にとって不利益な事態を招くことも考えられます。


例えば、零細企業の売主と大企業である買主を当事者とする製造委託契約があった場合に、その契約書中に品質保証条項があったとします。


この場合、売主側からすれば、仕様書記載の品質水準があれば、責任を負わないようにしたいと考え、反対に買主側からすれば、売主側に対して品質保持基準の策定を求め、さらには相手の事業所への立ち入りを求めるようにしたいと考えられます。


このような場合に、売主が漫然と買主から提示された契約書に署名・捺印をしてしまうと、買主へ自己の事業所の立ち入りを認めなければならないケースが出てきてしまい、相手に企業秘密が漏れる可能性が高くなります。


したがって、売主は、仕様書記載の品質水準があれば、責任を負わず、事業所への立ち入り条項も設けないよう条件交渉する必要があります。




契約書の斜め読み

以上のように、取引先から提示された契約書を検討することなく(=契約書の斜め読み)、漫然と署名・捺印すると自己にとって不利益な事態を招くことがあるため、注意する必要があります。


また、上記のような不利益を考慮すると、たとえ相手方が大きい会社で、こちらが個人事業主又は中小零細企業であっても、できるだけ条件提示を行うことが望まれます。