ライター業務委託契約書の意義


【意義】

ライター業務委託契約書は、委託者がライター、脚本家等の受託者に対して原稿、脚本等のライター業務を委託する場合に用いられる契約書で、委託するライター業務の内容、納品、報酬の算定、検査、著作権の帰属等の項目が規定されます。

 

 


【委託するライター業務の内容の特定】

納品された原稿、脚本等が委託者が希望している内容と異なる場合、当事者間でトラブルになるおそれがあるため、ライター業務委託契約において、委託するライター業務の内容を特定することが重要といえます。

 

例えば、原稿の執筆を委託する場合には、原稿テーマ、原稿分量等によりその内容を特定することになります。

 

また、原稿の執筆に際し、取材、写真撮影等の関連業務が生じる場合には、その旨をライター業務委託契約書に規定することになります。

 

 


【再委託等の禁止】

原稿、脚本等のライター業務に受託者以外の第三者が関与するとその第三者と著作権を共有するおそれがあるため、ライター業務の第三者への再委託又は第三者とのライター業務の共同実施を認めないことがあります。

 

 


【納品及び報酬の算定】

ライター業務委託契約は、ライター、脚本家等の受託者が委託者に対して原稿、脚本等の執筆の完成を約し、委託者がこれに対して報酬を支払う契約であるため、「原稿、脚本等をいつまでに納品するか?」、「報酬の算定をどのようにするのか?」を規定することが必要となります。

 

この点、執筆を完成させることと著作権を譲り渡し、又は著作権の利用許諾を行うことは、それぞれ別の取引となるため、それぞれに報酬が生じ得るとも解釈できます。

 

そのため、委託者が受託者に支払う報酬の中には、単に受託者が執筆を完成させることに対する対価のみならず、著作権の譲渡又は利用許諾に対する対価が含まれていることを明記することが重要です。

 

なお、これ以外にも委託者が受託者が創作した原稿、脚本等を二次利用した場合であっても、委託者は、受託者に対して追加で報酬を支払う必要がないことが規定されることがあります。

 

 


【検査】

(1)納品された原稿、脚本等が完成しているか否か及び(2)納品された原稿、脚本等が契約内容に適合しているか否かを確認するため委託者による検査の条項が定められます。

 

原稿、脚本等が完成したと評価できる場合には、特約がない限り、その原稿、脚本等の引渡時に委託者は、受託者に対し、委託料を支払う必要があります。

 

なお、ここでいう「完成」とは、「契約で予定していた最後の工程まで終えていること」をいい、たとえ原稿、脚本等に瑕疵があったとしても、委託者は、委託料の支払いを免れないとされます。

 

もし、原稿、脚本等に瑕疵があるときは、受託者の委託者に対する契約不適合責任の問題として処理されます。

 

 


【著作権の帰属】

ライター、脚本家等が原稿、脚本等を創作することになるため、一次的にこれらの者に著作権が帰属します。

 

委託者が受託者から納品を受けた原稿、脚本等について複製等の利用を行うためには、ライター、脚本家等から著作権(著作権法第27条及び同法第28条に規定する権利を含みます。)を譲り受け、又はその利用についての許諾を得る必要があるため、ライター業務委託契約において、著作権の譲渡条項又は利用許諾条項が定められます。

 

なお、委託者が受託者から著作権を譲り受けても、著作者人格権までは譲り受けることができないため、ライター業務委託契約では、原稿、脚本等の一部改変に備えて著作者人格権の不行使条項が定められることがあります。

 

 


【表明保証】

受託者が創作した原稿、脚本等が第三者の著作物に基づくものであり、その原稿、脚本等を委託者の著作物に利用するときは、仮にその第三者の承諾があったとしても、受託者が創作した原稿、脚本等は、第三者の著作物の二次的著作物となり、委託者の著作物は、その原稿、脚本等の二次的著作物となるため、その第三者は、委託者の著作物について、利用権を有することになります。

 

そのため、原稿、脚本等が受託者によるオリジナルのものであることを表明保証する場合があります。

 

 


【クレジット表記】

受託者が創作した原稿、脚本等が委託者の動画に利用される場合には、受託者のクレジット表記を行うことがあります。