No.10-契約書作成時の注意事項


 

Q 契約書作成時の注意事項を教えてください。

 

 


 

A

契約書作成時に問題となりうる項目は下記の通りと考えられます。

<契約書の前文>

⇒ 契約当事者や契約内容を特定するのに用いられます。具体的には、「●●を甲とし、××を乙とし以下のとおり、▲▲契約を締結する。」というのような体裁で設けられます。契約書の前文は、一般的にその内容を分かりやすくするため設けられるものと言えます。

 

 

<契約書の後文>

⇒ 契約書の後文は、印紙税額と契約の効力に影響してくる部分になり、「上記合意成立の証として、本契約書2通を作成し、甲乙各々記名捺印の上、各1通を保有する。」といった体裁で設けられます。 この場合、「本契約書を2通を作成し」とあるので、2通分の印紙税が課せられます。また、「甲乙各々記名捺印の上」とあるので、捺印されていないと、契約が成立していないという推定が働きます。

 

 

<捨印とは>

⇒ 捨印とは、契約書を作成する場合に、記載の誤りを訂正する際の訂正印の捺印に代えて、当該契約書の欄外に捺印された印のことです。 後日改ざんされるおそれがあるので、原則捨印は押さないようにするべきです。

 

 

<契印と割印に違いとは>

⇒ 契印とは、契約書が複数枚にわたって作成された場合に、そのとじ目に印を押すことをいい、差し替え防止のためになされるものです。 冊子タイプの契約書には、製本テープで袋とじされたものと、ホッチキスで留めただけのものがありますが、前者の場合は、製本テープとの境目に、表裏両方とも、当事者全員が印を押します。後者の場合、各頁の繋ぎ目ごとに、それぞれ契約当事者全員が印を押します。 他方、割印は独立した契約書が複数存在する場合に、これらが相互に関連又は同一であることを示すために、押す印のことをいいます。 なお、契印のことを割印と呼ぶ場合もあります。

 

 

<契約書の訂正方法>

⇒ 訂正箇所に二重線を引き、横書きの契約書の場合、訂正箇所の上か下に、縦書きの場合、左か右に訂正後の字句を書き入れます。そして、欄外に「○字削除 ○字加入」と書き入れ、契約当事者全員で押印します。 なお、上記のような訂正方法だと、手間がかかるということで、捨印が用いられる場合もありますが、勝手に金額等の契約の重要部分が変更されることもあるので、極力捨印は使わないことが望ましいです。

 

 

<署名と記名の違い>

⇒ 署名は、自筆で氏名を記したものであり、記名とはワープロやゴム印等で自筆以外で氏名を記したものです。 なお、商法32条において、署名=記名+押印されていますが、実際の契約においては、署名だけでは足りず、それに加えて捺印も求められます。

 

 

<「直ちに」・「速やかに」・「遅滞なく」の違い>

⇒ 一般的な使われ方として、「直ちに」・「速やかに」・「遅滞なく」の順に即時性があるとされています。一番即時性が強いとされる「直ちに」は何があっても即座にの意味で捉えるとよいです。

 

 

<「前項」・「前2項」・「前各項」の違い>

⇒ 例えば、ある条文中、1項から5項まであったとした場合、5項に「前項」とあれば4項のことを指します。5項に「前2項」とあれば、4項と3項のことを指します。5項に「前各項」とあれば、4項から1項全部を指します。

 

第●条

(1)・・・・・・・・・・

(2)・・・・・・・・・・

(3)・・・・・・・・・・

(4)・・・・・・・・・・

(5)(前項)(前2項)(前各項)記載の事項は・・・・・

 

 

<期間の計算方法>

⇒ 初日が完全に24時間存在する場合を除き、初日は算入せずに期間計算を行います。例えば、本日より10日間とある場合で、本日が5月1日のときは、5月11日が末日となります。 なお、月単位・年単位で期間計算を行う場合もありますが、その場合は、その起算日に応当する日の前日を末日とします。

 

例えば、6月1日から2ヶ月間とある場合は、8月1日の前日=7月31日が末日となります。また、平成21年6月1日から2年間とある場合は、平成23年5月30日が末日となります。

 

 

<契約締結の相手>

⇒ 会社と契約する場合、誰が契約締結権限者なのかは重要な問題となります。 基本的に、会社と契約をする場合、代表取締役と締結することを第一に考えるべきといえます。 それは、代表取締役・代表取締役設置会社でない場合の取締役には、契約締結権限があり、その権限を商業登記簿で確認することができ、契約締結権限者としては一番望ましいといえるからです。

 

ただ、代表取締役が設置されていない株式会社の場合、代表取締役が存在しないので、誰が契約締結相手としてふさわしいのか再度問題となります。

 

この点、取締役と契約締結することが考えられます。なぜなら、各取締役はそれぞれ代表権を有しているため、各取締役が契約締結権者としてふさわしといえるからです。 上記以外にも、限定的ではありますが、契約締結相手として考えられる契約締結権者が存在し、それは、支配人です。

 

なぜなら、支配人は、その事業に関し一切の裁判上・裁判外の行為をする権限を有し、当然に契約締結権限者となるからです。また、支配人は登記事項のため外部からも誰が支配人なのかをチェックすることができ、契約締結相手として候補の一つといえます。

 

もっとも、支配人が締結できる契約事項は、選任された事業所の事業に限られるため、代表取締役が契約相手の場合と異なり、契約締結権限の範囲が狭くなります。