舞台出演契約書の意義


【意義】

舞台出演契約書は、公演主催者の舞台に俳優が出演する場合に用いられる契約書のことをいい、次のいずれかの方法により契約が締結されます。

 

(1)公演主催者が俳優の所属事務所との間で舞台出演契約を締結する方法

(2)公演主催者が俳優との間で舞台出演契約を締結する方法

 

舞台出演契約は、所属事務所が俳優に特定の舞台へ出演させ、又は俳優が特定の舞台に出演する義務を負っている点で請負契約の性質を有すると考えられています。

 

 


【出演する舞台の特定】

舞台出演契約では、所属事務所が俳優に特定の舞台へ出演させ、又は俳優が特定の舞台に出演する義務を負っており、俳優がリハーサルから舞台の終了まで物理的な拘束を受けることになるため、出演する舞台のスケジュール、出演場所等を明確にしておくことが重要となります。

 

 


【出演料】

出演料を取り決める上で重要となる視点は、次のとおりとなります。

 

(1)出演料の範囲

出演料が舞台の出演にとどまらず、リハーサル及び舞台の宣伝活動への参加を含むものであるか否かを明記する必要があります。

 

(2)出演料の支払時期

公演主催者が出演料を一括して支払うのか?それとも分割して支払うのか?を明記する必要があります。

 

 


【費用】

俳優が舞台及びリハーサルに出演するために必要な宿泊費及び交通費を公演主催者が負担する旨の規定が定められることが多いといえます。

 


 【舞台の宣伝活動とパブリシティ権】

舞台出演契約では、所属事務所が俳優に対して舞台の宣伝活動に参加させ、又は俳優が舞台の宣伝活動に参加するよう義務付けられることがありますが、その場合、俳優の容姿等が利用され、パブリシティ権の問題が生じます。

 

そこで、舞台出演契約では、所属事務所又は俳優が公演主催者に対して俳優の容姿等を舞台の宣伝活動に無償で利用することを許諾する旨の条項が規定されることがあります。

 

 


【舞台映像等の利用】

舞台出演契約では、公演主催者が所属事務所又は俳優へ対価を支払うことを条件として、俳優が出演した舞台を録音録画し、又は写真撮影した舞台映像等を編集し、公演主催者がDVD販売、インターネット配信等をすることができる旨の条項が定められることがあります。

 

なお、インターネット配信をする場合には、当事者間の齟齬を防ぐため、配信先のプラットフォームの名称を舞台出演契約書に明記することが重要といえます。

 

 


【俳優の髪型に対する制限】

舞台では、俳優が特定の役を演じることになり、舞台が終了するまでその俳優にその役の髪型を維持してもらう必要が出てきます。

 

そこで、髪型を変更する場合には、事前に公演主催者の許可を得なければならないとされることがあります。

 

 


【舞台の中止と出演料の取扱い】

舞台が災害等の不可抗力で中止となった場合、所属事務所又は俳優が受領する出演料がどのように取り扱われるのかが問題となりますが、一例として、既に俳優がリハーサル、舞台出演等を行った分の出演料については、公演主催者に支払義務があるものとし、それ以外の分については、公演主催者に支払義務がないとする方法が考えられます。

 

 


【著作権処理】

舞台において第三者が創作した著作物(音楽、写真等)を利用する場合には、原則として、その著作権者の承諾が必要となります。

 

そのため、利用する著作物について、公演主催者又は所属事務所(契約当事者が所属事務所ではなく、俳優の場合には、俳優。)のどちらが、著作権者の承諾を得て利用料を支払うのかを取り決める必要があります。

 

 


【実演家人格権】

俳優には実演家人格権があるため、俳優が出演する舞台を公演主催者が録音録画し、又は写真撮影した舞台映像等を編集する場合には、俳優の名誉及び声望を傷つけないように配慮する旨の規定が定められることがあります。

 

また、これに加えて公正な慣行にしたがって俳優の氏名を表示するか否かも規定されることがあります。

 

 


【舞台出演契約における特有の解除事由】

公演自体が批判の対象となることを避けるため、所属事務所又は俳優が自らの社会的信用を毀損し、又は公演主催者の信用若しくは公演における配役のイメージを毀損するような行為を行ったときは、公演主催者は、舞台出演契約を解除できるとすることがあります。