M&Aアドバイザリー契約書の意義


【意義】

M&Aアドバイザリー契約書は、M&Aの売主及び買主の双方又は売主若しくは買主の一方に対して受託者がM&Aの成立に向けての助言等のアドバイザリー業務を行う場合に用いられる契約書をいい、準委任契約の性質を有すると考えられています。

 

M&Aアドバイザリー契約では、(1)売主及び買主の双方の仲介の場合、(2)売主又は買主の一方のアドバイザーとなる場合の二つのパターンが考えられます。

 

 


【利益相反】

売主及び買主の双方の仲介を行う場合のM&Aアドバイザリー契約では、受託者において、売主と買主との間で利益相反をリスクがあるため、その旨の承諾に関する条項をM&Aアドバイザリー契約に規定することがあります。

 

 


【アドバイザリー業務の範囲】

M&Aアドバイザリー契約において、受託者が行う業務の内容としては、概ね次のものがあります。

 

(1)必要情報の収集及び調査並びに資料作成

(2)スキームの立案

(3)スケジュール調整

(4)交渉立会い

(5)デューデリジェンスの実施

 

 


【報酬】

アドバイザリー業務の報酬については、一般的には、着手金+中間報酬+功報酬制の形で定められることが多いといえます。

 

(1)着手金 

着手金は、一般的にM&Aアドバイザリー契約を締結をする段階で一定の報酬を委託者が受託者に対して支払うものです。

 

(2)中間報酬

中間報酬は、候補企業の株主又は候補企業との間における株式譲渡契約又は事業譲渡契約の締結段階で一定の金額の報酬を委託者が受託者に対して支払うものです。

 

(3)成功報酬

成功報酬は、受託者のアドバイザリー業務により委託者が候補企業の株主又は候補企業との間で株式譲渡契約又は事業譲渡契約を締結した段階で一定の金額の報酬を委託者が受託者に対して支払うものです。

 

成功報酬の定め方の一例としては、例えば、その委託者が譲り受ける株式又は事業の価格及び引き続ぐ負債の合計額に一定の料率を乗じて算出された金額を成功報酬とすることが考えられます。

 

 


【直接交渉の禁止】

M&Aアドバイザリー契約においては、委託者が受託者の承諾を得ることなく、候補企業の株主又は候補企業との間で直接交渉してはならないとされることが多いといえます。

 

 


【秘密保持】

M&Aアドバイザリー契約においては、委託者が自らの秘密情報を受託者に対して提供することが多いため、機密保持に関する取り決めがなされます。

 

 


【セカンドオピニオン】

売主又は買主が他のM&A専門業者にセカンドオピニオンを求めることができるとしつつ、そのセカンドオピニオンに従ったことにより生じた損害については、受託者は、その責任を負わない旨の条項がM&Aアドバイザリー契約に規定されることがあります。

 

 


【M&Aの実現の不保証】

M&Aアドバイザリー契約は、請負契約として、仕事の完成を合意するものではなく、準委任契約であると捉えられるため、受託者は、M&Aの実現までは保証できないことをM&Aアドバイザリー契約に規定することが多いといえます。

 

 


【テール条項】

M&Aアドバイザリー契約終了後の一定期間内に売主がM&Aアドバイザリー契約の有効期間中に紹介を受けていた候補先の買主との間で株式譲渡契約又は事業譲渡契約を行った場合には、M&Aアドバイザリー契約が終了しているのにもかかわらず、受託者が売主から報酬を取得することができるという条項(=テール条項)がM&Aアドバイザリー契約で規定されることがあります。