買主の資金繰り悪化と出荷停止条項



Q 当社は自らを売主として買主と制作物供給契約を締結し、契約条件は商品先渡し・代金後払いとしました。


しかし、その後、買主の資金繰りが悪化してしまったため、売買代金を回収できなくなりそうです。


その様な状況でも、約定通り当社は制作物の供給について先履行しなければならないのでしょうか?





A このように、当事者の一方が先履行義務を負う場合、相手からの履行提供があるまで履行を拒めるとされる同時履行の抗弁権は主張できませんが、代わりに不安の抗弁権というものが認められます。


この不安の抗弁権とは、相手の信用状態や資産状態が悪化したため、自己の債権の履行を受けることが危ぶまれる場合に、自己の債務の履行を拒むことをいいます。


本件でいえば、売主は買主の資金繰りが悪化したことを理由として、自己の債権の弁済を受けられない具体的な危険を理由として制作物の供給を拒むことになります。


そして、この不安の抗弁権は法律上明確な規定がなく、解釈上認められているものであり、円滑に相手に主張できるようにするため、特約として契約書上に明確に、不安の抗弁権を規定するべきといえます。


本件を例にして考えれば、「出荷停止条項」として、買主の支払不能、債務超過に陥るおそれがあるときは、売主は買主にあらかじめ通知した上で制作物の供給を停止できる旨の条項を設けることが考えられます。