No.43-住宅ローンと財産分与


 

Q 離婚時の財産分与として、一方配偶者から住宅ローン返済中のマンションを他方配偶者へ譲渡する場合の留意点について教えて下さい。

 

 


 

A

<財産分与と住宅ローン>

⇒ 例えば、財産分与として、夫から住宅ローン返済中のマンションを妻に譲渡する場合があり、この場合、離婚公正証書の条項に「離婚に伴う財産分与として下記不動産を妻に給付し、住宅ローンは夫が完済する。住宅ローン債務が完済された後、夫から妻への所有権移転登記をする。」定めるのが一般的です。

 

このような取り決めの際、夫が住宅ローンの返済を怠ったときに備えて、妻は夫に事前に求償できるようにしたり(事前求償権)、妻が支払った住宅ローンを夫に求償できること(事後求償権)を定めることがあります。

 

ただ、ここで注意しなければいけない点があり、執行裁判所では、事前求償の場合は強制執行できるが、事後求償の場合は、強制執行できないとの扱いをしています。

 

言い換えると、妻が夫に代わって毎月住宅ローンの金額を支払っている場合、その額を事前に求償するようなケースでは強制執行できる余地があるが、夫が支払わない金額を妻が金融機関に弁済した後で夫に対して請求するようなケースでは強制執行できないとされています。

 

これは、執行力のある公正証書を作成する場合には、「金額の一定性」が必要なところ、事後求償のケースだと、夫が金融機関に支払ったり、支払わなかったりで妻の支払うべき金額が定まらず、「金額の一定性」の要件を満たさないと考えられているためです。

 

また、強制執行認諾文言付公正証書で債務名義として執行力が認められるには、公正証書に支払うべき「金額の一定性」が求められるため、住宅ローンの金利は固定金利である必要があります。

 

したがって、住宅ローンに関する求償関係に関して、執行力のある公正証書が作成できる場合というのは、ローン返済額が一定している場合(変動金利ではなく固定金利の場合に限る。)であって、事前求償のケースのみということになります。なお、事前求償権の行使は弁済期到来後であっても差し支えありません。