【意義】
カウンセリング業務委託契約書は、相談者(委託者)がカウンセラー(受託者)に対してカウンセリングの実施を委託する場合に用いられる契約書で、委託するカウンセリング業務の詳細、予約方法、改善の不保証、報酬の算定、カウンセリング記録の不開示、キャンセル、個人情報等の項目が規定されます。
カウンセリング業務委託契約は、カウンセラーが相談者に対して仕事の完成を約束するものではなく、善管注意義務をもって、カウンセリング業務を処理する場合の契約であるため、類型としては、準委任契約であると考えられています。
ただし、カウンセラーが相談者のために特定の資料を作成することを目的としていた場合には、請負契約に該当する場合があります。
【カウンセリング業務の内容に相談者が満足しない場合】
カウンセリング業務委託契約は、基本的に準委任契約であるため、たとえ、相談者が定期的にカウンセリングを受けたのにもかかわらず、心、対人関係等の改善が見られず、相談者がカウンセリングの結果に対して満足できなかったとしても、カウンセラーは、自らが善管注意義務を果たしている限り、相談者へ報酬の返金等を行う必要はありません。
【カウンセリング業務の詳細】
カウンセリング業務委託契約では、カウンセラーが債務を履行しているか否かの判断基準を明確にするため、カウンセラーが相談者に対して実施するカウンセリングの内容、実施方法等の詳細を定めることが重要です。
例えば、カウンセリング業務の実施について、相談者がカウンセラーの相談ルームに訪問した上で行うのか?それとも、Zoom等のオンラインで行うのかが規定されることがあります。
【予約方法】
カウンセリングを受ける場合の予約方法を規定することが多く、例えば、WEBサイトによる予約の場合、カウンセラーからの返信をもって予約が完了する形がとられることがあります。
【改善の不保証】
相談者がカウンセリングを受けた場合であっても、カウンセラーは、相談者の心、対人関係等が改善されることまでは保証しない旨が規定されることがあります。
【報酬の算定】
民法上、特約がない限り、カウンセラーの相談者に対するカウンセリング業務の実施が終了しないとカウンセラーは、相談者に対し、報酬を請求することができません。
そのため、相談者に対して報酬を前払いしてもらう予定がある場合には、カウンセリング業務委託契約において、報酬の支払いについては、前払い制である旨の条項を定めることが重要となります。
【カウンセリング記録の不開示】
カウンセラーが作成したカウンセリング記録の開示について相談者が開示を求めた場合、カウンセラーがこれを開示すると相談者に心理的な影響を与えるおそれがあります。
そこで、カウンセリング業務委託契約では、カウンセリング記録の不開示についての条項が定められることがあります。
【キャンセル】
相談者の都合でカウンセリング日の前日にキャンセルするときは、何らのキャンセル料は生じないものの、カウンセリング日の当日にキャンセルするとき、一定のキャンセル料が発生するとすることがあります。
なお、緊急やむを得ない事由があるときは、カウンセラーの都合でカウンセリングの日程変更を行えるとすることがあります。
【個人情報】
カウンセラーが相談者の個人情報を第三者へ開示してはならない旨が規定されることが多いといえます。
ただし、相談者が自傷他害行為を行うおそれがある場合等緊急に対応する必要があるときは、カウンセラーが相談者の個人情報を第三者に開示できるようにすることがあります。
なお、個人情報保護法では、「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」は、あらかじめ本人の同意を得ないで、本人の個人情報を第三者へ開示することが認められています。