ソフトウェアライセンス契約書(インストール型)の意義


【意義】

ソフトウェアライセンス契約(インストール型)は、ライセンサーのウェブサイト又はCD-ROM等の記録媒体からダウンロードしたソフトウェアをライセンシーの端末にインストールすることにライセンシーがソフトウェアを使用する場合に締結される契約です。

 

ソフトウェアライセンス契約(インストール型)において、ライセンシーは、インストール済のパソコン、スマートフォン等の端末を有していれば、インターネット環境下になくても、いつでもソフトウェアを使用できます。

 

また、インターネットに接続しなくてもソフトウェアを使用できるため、セキュリティ面で安全性が高いとされます。

 

 


【ソフトウェア使用権の譲渡不可等】

ソフトウェアライセンス契約(インストール型)では、ライセンサーが他のライセンシーにもソフトウェアを使用させるため、ライセンシーに許諾されたソフトウェア使用権は、非独占的なものであり、かつ、ライセンシーは、第三者に対してその使用権を譲渡し、又は再許諾してはならないとされることが多いといえます。

 

 


【使用目的】

ソフトウェアライセンス契約(インストール型)では、ライセンシーが一定の使用目的の範囲内でソフトウェアを使用できるとされることが多く、実務では、「自己の業務遂行のために」等と規定されることがあります。

 

これは、上記のような規定がないとライセンシーが一般向けにソフトウェアの使用権を販売し、ライセンサーの売上に打撃を与える等の事態が生じるおそれがあり、このような事態を防止するためです。

 

 


「指定装置」

ソフトウェアライセンス契約(インストール型)においては、「ライセンシーの〇〇部に設置されたPC〇台」等の形でライセンシーがソフトウェアを使用できる指定装置の範囲を取り決めることが多いといえます。

 

 


【ソフトウェアの引渡及び検査】

ライセンサーがライセンシーに対してCD-ROM等の記録媒体によりソフトウェアを引き渡すときは、ソフトウェアライセンス契約(インストール型)において、売買契約と同様に次の条項を定めることになります。

 

(1)引渡時期及び引渡場所に係る条項

(2)検査に係る条項

 

上記(2)の検査に係る条項においては、検査で契約内容に適合しないことを発見したときは、ライセンシーが一定期間内にその旨をライセンサーへ通知し、ライセンサーがソフトウェアの修理又は代替物若しくは不足分の引渡を行う旨が規定されることが多いといえます。

 

また、ライセンシーがライセンサーのウェブサイトからダウンロードすることによりソフトウェアが引き渡されるときは、ソフトウェアライセンス契約(インストール型)において、ライセンシーがイセンサーのウェブサイトからソフトウェアをダウンロードし、ライセンサーが発行したプロダクトキーをそのソフトウェアに入力してインストールする旨の条項が規定されることがあります。

 

 


【使用料】

ソフトウェアライセンス契約(インストール型)における使用料については、指定装置の数、機能等に応じて異なる料金体系が採用されることが多いといえます。

 

なお、ソフトウェアライセンス契約(インストール型)においては、現にライセンシーがソフトウェアを使用できた以上、ライセンシーがライセンサーに対して事由の如何を問わず、支払済の使用料の返金を求めることができないことを確認することが多いといえます。

 

 


【禁止行為】

ソフトウェアライセンス契約書(インストール型)では、ソフトウェアのリバースエンジニアリング、ソフトウェアのサブライセンス、有害ウイルスの送信等ソフトウェアを使用するに際しライセンシーが行ってはならない事項が禁止行為として規定されます。

 

 


【監査】

ライセンシーがソフトウェアライセンス契約(インストール型)に定めた条件に基づきソフトウェアを使用しているのかを確認するため、ライセンシーに対する事前通知を条件として、ライセンサーは、自ら又は第三者を通じてライセンシーのソフトウェアの使用状況を監査することができるとする場合があります。

 

なお、その監査費用については、原則、ライセンサーが負担するものの、監査において、ライセンシーがソフトウェアライセンス契約(インストール型)に違反している事実が確認されたときは、ライセンシーがその監査費用を負担する形が多いといえます。

 

 


【保証】

ソフトウェアライセンス契約(インストール型)において、ソフトウェアが取扱説明書等の仕様どおりに稼働することをライセンサーが保証ることがあります。

 

その上でライセンシーが取扱説明書等の仕様以外の動作環境等でソフトウェアを使用した場合、ライセンサーが何らの保証をしないこと及びソフトウェアがライセンシーの特定の目的に適合することを保証しないことが規定される場合があります。

 

 


【契約不適合責任】

ソフトウェアライセンス契約(インストール型)においては、次のいずれかの形でライセンサーの契約不適合責任を規定することがあります。

 

(1)ライセンサーの契約不適合責任を制限する形

⇒ライセンサーは、ソフトウェアの性能、機能その他の品質について何らの制限を負わず、CD-ROM等の記録媒体に物理的な欠陥があるときは、一定期間内に限り、ライセンシーへ代替物の引渡等を行う形になります。

 

(2)ライセンサーの契約不適合責任を一定程度認める形

⇒ライセンサーは、いずれも一定期間内に限り、CD-ROM等の記録媒体に物理的な欠陥があるときは、ライセンシーへ代替物の引渡等を行い、仕様どおりにソフトウェアが作動しないときは、検査完了後、修正版のソフトウェアの提供等を行う形になります。

 

 


【環境整備】

ソフトウェアライセンス契約(インストール型)では、ソフトウェアを使用するのに必要なインターネット回線、端末等の環境をライセンシーが自らの責任と費用負担で整備しなければならないとされることがほとんどといえます。

 

実務では、上記に加えて、ライセンシーが整備した環境とソフトウェアとの整合性について、ライセンサーは、何ら保証しないとされることがあります。

 

 


【保守契約】

ソフトウェアライセンス契約(インストール型)においては、ライセンシーがソフトウェアのバージョンアップ、メンテナンス等を希望するときは、ライセンシーは、別途ライセンサーとの間で有償の保守契約を締結しなければならないことが規定されることがあります。

 

 


【不具合が発生した場合の契約不適合責任と保守契約との比較】

不具合が発生した場合の契約不適合責任と保守契約との比較については、次のようになります。

 

(1)契約不適合責任

ソフトウェアの引渡時点に存在した不具合が対象

(2)保守契約

ソフトウェアの引渡時点に存在した不具合のみならず、引渡後に生じた不具合も対象

 

 


【ソフトウェアライセンス契約(インストール型)終了時の措置】

ソフトウェアライセンス契約(インストール型)では、事由の如何を問わず契約が終了した場合、ライセンシーが速やかにソフトウェアを指定装置から消去しなければならないとすることが多いといえます。

 

なお、技術的に可能であれば、ソフトウェアライセンス契約(インストール型)において、事由の如何を問わず契約が終了した時点で、ライセンサー側で技術的措置によりソフトウェアの使用を自動的に中止できるとすることがあります。