ソフトウェアライセンス契約書(製品販売型)の意義


【意義】

ソフトウェアライセンス契約(製品販売型)は、ライセンシーがライセンサーの許諾を得た上でライセンサーのソフトウェアを自らの製品に組み込んでその製品をユーザーに販売する場合に締結される契約です。

 

 

製品にソフトウェアを組み込んで販売するときは、主にソフトウェアの複製、翻案、譲渡等が問題となり、これらは、著作権上の支分権になるため、これらの許諾を得ることが重要となります。

 

なお、ソフトウェアライセンス契約(製品販売型)には、独占的にそのライセンシーのみがソフトウェアの使用権を有する場合と非独占的なものとしてそのライセンシー以外の者もソフトウェアの使用権を有する場合の二つがあります。

 

 


【再使用許諾】

ユーザーにライセンサーのソフトウェアを組み込んだ製品を販売するに際し、ライセンシーは、事前にライセンサーが承認した条件でユーザーに対してソフトウェアの再使用許諾を行わなければならないとされることが多いといえます。

 

これにより、ライセンサーとしては、ユーザーに対して間接的にソフトウェアの改変、解析等の禁止の義務を負わせることが可能になります。

 

 


【禁止行為】

ソフトウェアライセンス契約書(製品販売型)では、禁止行為としてソフトウェアのリバースエンジニアリング等をライセンシーが行ってはならないとされることが多いといえます。

 

 


【納入】

ソフトウェアの納入については、概ね次の事項が規定されることが多いといえます。

 

(1)ライセンサーは、ライセンシーに対し、CD-ROM等の記録媒体又はインターネットによりソフトウェア及び付属資料を提供すること。

(2)ライセンシーは、一定の検査期間内にソフトウェア及び付属資料の不足を検査し、その期間内に何らの通知をライセンサーへ行わないときは、ソフトウェア及び付属資料は、適切に納入されたものとして取り扱うこと。

(3)ソフトウェア又は付属資料が検査に合格しないときは、一定の検査期間内にライセンシーがライセンサーへその旨を通知することを条件にライセンサーは、ソフトウェア又は付属資料の修正又は交換を行うこと。

 

 


【使用料】

ソフトウェアライセンス契約(製品販売型)の使用料については、ライセンシ―の製品の販売数量、製造数量等を基準とした出来高払い制が採用されることが多いといえます。

 

この場合、ライセンシーは、自らの製品の販売数量、製造数量等の数値をライセンサーに対して定期的に報告することになります。

 

なお、ソフトウェアライセンス契約(製品販売型)が独占的な契約である場合又は製品の販売数量等が予測できない場合には、使用料について、ライセンサーが一定の対価を得ることができるようにするため、最低保証金額を定めることがあります。

 

 


【契約不適合】

ソフトウェアライセンス契約(製品販売型)においては、ソフトウェアの納入後一定期間内にソフトウェアの不具合、有害コードの混入等の契約不適合が生じたときは、ライセンサーがソフトウェアの修正又は交換を行わなければならないとすることがあります。

 

 


【監査】

使用権の算定について出来高払い制を採用しているときは、ライセンシーの製品の販売数量、製造数量等ライセンサーにおいて正確に把握できない情報を算定の基礎とすることになります。

 

この点について、ライセンシーによるこれらの数値の報告の正確性を担保するため、ライセンサーによるライセンシーの事務所等の監査の規定がソフトウェアライセンス契約(製品販売型)に定められることがあります。

 

 


【侵害の排除】

第三者がソフトウェアの権利を侵害し、又はそのおそれのある行為をした場合のライセンサー及びライセンシーの対応については、次のものがあります。

 

(1)ライセンサーがその第三者に対して侵害の排除又はその予防に必要な措置を講じる義務を負い、ライセンシーがこれらに協力する義務を負う場合

(2)ライセンサーがその第三者に対して侵害の排除又はその予防に必要な措置を講じる義務までは負わず、これらの措置を行うか否かの判断は、ライセンサーに委ねられ、もし、これらの措置を講じるときは、ライセンシーがこれらに協力する義務を負う場合

 

 


【他のソフトウェアとの区別又は分離】

ソフトウェアライセンス契約(製品販売型)においては、ライセンシ―がソフトウェアを製品に組み込む場合に他のソフトウェアも組み込むときは、両者を区別又は分離できるようにしなければならないとされることがあります。

 

これは、両者が区別又は分離できないことにより、ライセンサーと他のソフトウェアの権利者との間で共有になるのを防ぐためです。

 

 


【ソフトウェアの改変等】

ソフトウェアライセンス契約(製品販売型)においては、次のような内容でライセンシーによるソフトウェアの改変、改良又は翻案が認められる場合があります。

 

(1)改良等が行われたソフトウェアは、ライセンサー及びライセンサーの共有とすること。

(2)改良等を行ったときは、ライセンシーは、速やかにその旨をライセンサーに通知すること。

(3)改良等が行われたソフトウェアを契約の有効期間中にライセンシーが使用するときは、使用料をライセンサーに支払った上で使用し、その終了後にライセンシーがそのソフトウェアを使用するときは、あらためてライセンサーとライセンシーとの間で使用条件を協議すること。

(4)改良等が行われたソフトウェアを契約の有効期間中のみならずその終了後においてもライセンサーが使用できること。