技術開発業務委託契約書の意義


【意義】

技術開発業務委託契約書は、民法における請負契約として、委託者が受託者へ技術を完成させることを委託し、受託者がその技術の完成に責任を負う場合に用いられる契約書です。

 

技術開発業務委託契約における委託者のメリットとしては、コスト低減、技術開発の期間短縮等のメリットがあるとされます。

 

反対に委託者のデメリットとしては、開始後における仕様変更の困難性、重要情報の流出リスク等のデメリットがあるとされます。

 

なお、技術開発の成否が不確実な場合、技術開発業務委託契約を請負契約として構成すると、受託者に仕事完成義務が課され、受託者にとってはリスクが高い契約となるおそれがあります。そこで、成否が不確実な技術開発を対象とするものについては、民法における準委任契約として構成する場合があります。

 

 


【仕事完成の判断基準】

仕事が完成したか否かの判断基準については、技術開発業務委託契約の如何によりますが、実務上、検収完了をその基準とすることがほとんどだと考えられます。

 

ただし、検収完了ではなく、予定工程の完了を仕事完成の基準とすることもあります(裁判例では、予定工程の完了を仕事完成の基準とすることが多いいえます。)。

 

 


【情報等の提供義務】

技術開発業務委託契約において、委託者は、自らが保有し、かつ、自らが受託者の技術開発業務に有益と判断する資料、試料又は情報(第三者へ秘密保持義務を負うものを除きます。)を相手方に対して提供することができるとすることがあります。

 

その上で、受託者は、技術開発業務の実施に必要な範囲で、委託者から提供された資料、試料又は情報を使用し、消費し、複製し、又は改変することができるとすることがあります。

 

 


【受託者の説明義務】

委託者に技術開発についての専門知識がないため、高度な専門性を有する受託者へ技術開発を委託するというような場合には、技術開発業務委託契約において、受託者の委託者に対する技術開発の中止又は仕様変更の助言又は提言といった説明義務を課す場合があります。

 

 


【受託者が第三者に対して秘密保持義務を負う秘密情報等の使用禁止】

委託者が第三者との間で紛争に巻き込まれないようにする観点から、受託者は、技術の全部又は一部について、受託者が第三者に対して秘密保持義務を負う秘密情報又は第三者の営業秘密若しくは著作物を使用し、又は利用してはならないとすることがあります。

 

なお、技術の一部にプログラムを含む場合、ソフトウェアの脆弱性等の懸念から受託者が技術の全部又は一部についてオープンソースソフトウェアを使用し、又は利用してはならないことが併せて規定されることがあります。

 

 


【進行管理】

技術開発業務委託契約では、受託者は、委託者に対し、適宜又は定期に自らの実施状況を報告しなければならないとすることがあります。

 

これは、委託者が技術開発の成功可能性等を確認することを目的としています。

 

 


【報酬】

委託者から受託者に対する報酬の支払いについては、検収完了後に一括払いする方法、技術開発の進行段階に応じて分割払いする方法等が考えられます。

 

なお、報酬の額が技術開発に要した受託者の労力及び費用と比べて著しく低額であり、かつ、契約締結時に受託者がこれを予見することが著しく困難であったときは、受託者は、相当な範囲で委託者に対して報酬の増額を請求できるとする場合があります。

 

 


【委託者による相殺の禁止】

委託者が受託者に対して損害賠償請求権を有し、受託者が委託者に対して報酬債権を有している場合、委託者がその損害賠償請求権と報酬債権との相殺を主張し、報酬の支払を拒むおそれがあります。

 

そこで技術開発業務委託契約においては、委託者がその損害賠償請求権と報酬債権との相殺を主張することを禁止する場合があります。

 

 


【特許権等の帰属】

開発された技術に係る特許権等の帰属(受託者が技術開発業務委託契約の開始前から有する特許権等(=既存特許権等)を除きます。)については、大きく分けて次の方法が考えられます。

 

(1)検収完了時に受託者から委託者へ特許権等が移転する方法

⇒この場合、委託者が受託者へ特許権の移転登録手続等を求めたときは、受託者は、委託者の費用負担により、これに協力しなければならないとすることがあります。

 

(2)受託者に特許権等を帰属させたままにし、受託者から委託者へ非独占的通常実施権を許諾する方法

⇒委託者の受託者に対する報酬の支払いと同時に受託者が委託者へ許諾したものと取り扱うことがあります。

 

なお、委託者が開発された技術を事業として使用する場合において、その技術に既存特許権等が含まれているときであっても、受託者は、既存特許権等を行使しないとすることがあります。

 

これに加えて、既存特許権等を第三者に譲渡するときは、受託者は、事前にその第三者から委託者に対して既存特許権等を行使しない旨の同意を得なければならないとすることがあります(このような規定ではなく、既存特許権等について受託者から委託者へ非独占的通常実施権を許諾する場合もあります。)。

 

 


【開発前から受託者が有していた知的財産権の取扱】

技術開発業務委託契約では、開発された技術について、受託者が開発前から有する知的財産権が用いられていた場合、その権利を受託者に留保した上で次の措置を講じることがあります。

 

(1)委託者又は委託者の指定する第三者に対して受託者が開発前から有する知的財産権を行使しないこと。

(2)受託者が留保された開発前から有する知的財産権を第三者に譲渡するときは、受託者がその第三者に対して(1)の事項を遵守させ、受託者がその第三者からその点についての同意を得ること。

 

 


【委託者による任意解除】

技術開発業務委託契約には、民法における請負契約の要素があることから、受託者が技術を完成させるまでの間、委託者がいつでも任意解除できることを技術開発業務委託契約に確認的に規定することがあります。

 

なお、民法における請負契約では、委託者が任意解除すると委託者に損害賠償義務が発生してしまうことから、こちらの規定において、委託者がたとえ技術開発業務委託契約を任意解除しても損害賠償義務を負わないとすることがあります。

 

 


【契約不適合責任】

受託者が開発した技術について、検収完了後に仕様への不適合、通常有すべき品質又は性能の欠如その他の契約不適合が発見されたときは、委託者に帰責事由がない限り、一定期間内において、委託者が受託者に対して無償でその修補又はその不適合の程度に応じた報酬の減額を請求できるとする形が一般的です。

 

なお、この契約不適合の範囲には、第三者の知的財産権を侵害する場合も含むと考えられるため、これを除外する場合には、その旨の文言を技術開発業務委託契約に規定しておく必要があります。