代表取締役の第三者責任に関する合意書


【意義】

代表取締役の第三者責任に関する合意書は、代表取締役が自らの職務を行うについて悪意又は重過失により債権者等の第三者に対して損害を与えた場合において、債権者及び代表取締役間で代表取締役の損害賠償責任等について合意する場合に用いられる合意書をいいます。

 

例えば、貸付先の返済不能を予見し、又は予見できたのにもかかわらず代表取締役が漫然と貸付けを行った結果、回収不能に陥り、会社を倒産させた場合において、その会社の債権者が弁済を受けられなくなったときは、代表取締役は、その債権者に対し、任務懈怠により損害賠償責任を負うことになります。

 

この代表取締役の損害賠償責任の取扱いをどのようにするのかを明らかにするため、代表取締役の第三者責任に関する合意書が活用されます。

 

 


【任務懈怠の確認】

代表取締役の任務懈怠行為があったことを確認する旨の条項が代表取締役の第三者責任に関する合意書で定められます。

 

ただし、代表取締役の任務懈怠行為があったことを直接的に確認すると損害を被った債権者以外の第三者に対しても代表取締役が損害賠償責任を負う可能性があるため、事情関係だけを規定するにとどめる場合があります。

 

例えば、上記の例でいえば、貸付金の回収不能に陥ったことにより、会社が倒産したという事実のみを記載することがあります。

 

 


【解決金】

代表取締役の第三者責任に関する合意書では、代表取締役から債権者等の第三者に対し、解決金の名目で一定の期日までに一定の金銭を支払う旨の規定が定められます。

 

なお、会社が取締役会設置会社の場合、各取締役がいるところ、各取締役は、代表取締役の業務執行を監視する義務があるとされていることから、代表取締役のみならず各取締役も代表取締役の第三者に関する合意書の当事者に含めた上で、その義務違反を根拠に代表取締役及び各取締役が連帯して債権者等の第三者に対して損害賠償責任を負う形にする場合があります。

 

代表取締役個人の資力にも一定の限界があるため、この方法は、第三者にとっては有益な方法となります。