認知合意書


【意義】

認知合意書は、父が婚姻外子について認知の届出をし、その子の養育費を母へ支払うことを合意した場合に用いられる合意書で、母子関係は、分娩の事実により当然に生じるため、必ず父が婚姻外子について認知の届出を合意する形がとられます。

 

認知合意書においては、認知の届出、養育費の支払、親権及び監護権の帰属等に関する事項が定められます。

 

 


【認知の届出】

父親が認知の届出を一定の期日までに行うことが規定されます。

 

これは、たとえ、血統上の父が非嫡出子を養育している場合であっても、認知の届出を経ていなければ、いまだ認知の効力が生じず、法律上の父子関係が生じないためです。

 

なお、父が胎児認知をする場合には、母の承諾が、婚姻外子が成人している場合には、その子の承諾がそれぞれ必要となります。

 

 


【法律上の父子関係が生じた場合の効果】

父と非嫡出子との間で法律上の父子関係が生じた場合、次の効果が生じます。

 

(1)子が父の氏を称することが可能になること。

⇒この場合、家庭裁判所の許可を得た上で入籍届をすることにより、父の戸籍に入ることが必要になります。

(2)子が直接に父に対して扶養料を請求できること。

(3)子が父の第1順位の相続人になること。

 

 


【養育費の支払】

父が母に対していつからいつまでの範囲で、いくらの養育費を、どのような方法で、支払うのかを規定します。

 

なお、裁判例では、民法上認知を行うと「出生の時にさかのぼってその効力を生ずる」ため、子の出生時に遡って養育費の支払いを認めたものがあります。

 

そこで、認知合意書において、子の出生時に遡った分の未払養育費の支払について規定することがあります。

 

 


【親権及び監護権の帰属】

 認知合意書に子の親権及び監護権の帰属を規定する必要はありませんが、親権及び監護権に関する争いを防止するため、母にこれらの権利が帰属することを念のため規定することがあります。 

 

 


【DNA鑑定の実施】

母が父に対して認知を求めた場合において、父が婚姻外子を自らの子と認めているときは、DNA鑑定を行うことは、通常ありません。

 

反対に、このような場合において、父が婚姻外子を自らの子と認めていないときは、父母間で合意の上DNA鑑定を実施することがあり、鑑定機関、鑑定費用の負担及び次のような遵守事項を規定することがあります。

 

(1)DNA鑑定の結果、婚姻外子と父との間に父子関係が認められたとき。

⇒父は、一定期間内に認知の届出を行う。

 

(2)DNA鑑定の結果、婚姻外子と父との間に父子関係が認められないとき。

⇒母は、未成年者である婚姻外子の認知を求めて法的手続をとらない